ISBN 9784004300014

新しい文学のために

新しい文学のために
出版社
岩波書店
刊行
1988-01

概要

小説を書くための方法論と想像力の原理を体系的に論じる

想定読者

文学創作を志す書き手、または現代日本文学の方法論を批評的に理解したい読者

こんな人には向いていない

  • 特定作品の読解ガイドや鑑賞入門を求める読者には向かない。本書は創作技法の理論書であり、鑑賞エッセイではない
  • バフチン・ロシア・フォルマリズムなどの文学理論の基礎知識がまったくない場合、個々の概念説明に追いつくのに時間がかかる
  • 実用的な「文章上達マニュアル」を期待する読者には抽象度が高すぎる

読了後にできるようになること

  • 「異化」(デフォルミラツィア)の概念とそれを小説の文体・構造に戦略化する方法
  • 想像力が物語世界にどう働き、読者の認識を更新するかというメカニズムの理解
  • 「道化・トリックスター」「神話的な女性像」「カーニバルとグロテスク・リアリズム」といったバフチン的な小説の語彙を実作に接続する方法
  • 読むことと書くことを相互変換する「転換装置」という発想から、批評的読書を創作に還元するプロセス
  • 「文学は世界のモデルを作る」という命題を手がかりに、小説が持つ認識論的な機能を言語化する能力
  • 大江健三郎自身の創作実践に裏打ちされた、日本語小説ならではの文体論的課題の把握

本書のキー概念(章解説)

  • 第 1 章 「小説の声」が聞きとられる — 本書全体のエントリーポイント。「書き手の声」がどのように小説に宿るかを問い直す導入章
  • 第 2 章 様ざまなレヴェルにおいて — テクストの複数レヴェルを同時に読む批評的視座を提示する
  • 第 3 章 基本的な手法としての「異化」(一) — ロシア・フォルマリズムに由来する異化概念を丁寧に導入する章。ここを読まないと後半の展開が追いにくい
  • 第 4 章 基本的な手法としての「異化」(二) — 異化の具体例を積み重ね、読者の感覚を更新する仕組みを掘り下げる
  • 第 5 章 「異化」から戦略化・文体化へ — 技法としての異化を戦略レベル・文体レベルに引き上げ、実作への応用を論じる
  • 第 6 章 想像力はどんな働きをするか(一) — 虚構世界を成立させる想像力の機能論。創作の根拠を問う視点として重要
  • 第 7 章 想像力はどんな働きをするか(二) — 前章の続き。読者の想像力と書き手の想像力の相互性を論じる
  • 第 8 章 文学は世界のモデルを作る — 本書の認識論的な核心。小説が世界を解釈するモデルであるという命題を展開する
  • 第 9 章 読むと書くとの転換装置(一) — 批評的読書がどのように創作行為へ転換されるかを論じる。書き手には特に実践的な示唆がある章
  • 第 10 章 読むと書くとの転換装置(二) — 前章の深化。転換装置としての文学体験を具体化する
  • 第 11 章 道化゠トリックスター — バフチン的な道化の機能が日本文学にどう接続されるかを論じる
  • 第 12 章 神話的な女性像(一) — 神話・民俗的な女性表象が小説の構造に果たす役割を検討する
  • 第 13 章 神話的な女性像(二) — 前章の続き。大江作品を通じた具体的な論述が展開される
  • 第 14 章 カーニバルとグロテスク・リアリズム — バフチンのカーニバル理論を日本語小説の文脈に適用するための視座を提示する
  • 第 15 章 新しい書き手へ(一) — 本書の実践的結論に向かう章。これから書く人への具体的なメッセージを含む
  • 第 16 章 新しい書き手へ(二) — 全章を受けた総括。「新しい文学」が目指す方向性が集約される

ハイライト

  • 「小説の声」が聞きとられる——様ざまなレヴェルにおいて——基本的な手法としての「異化」——「異化」から戦略化・文体化へ——想像力はどんな働きをするか——文学は世界のモデルを作る——読むと書くとの転換装置——道化゠トリックスター——神話的な女性像——カーニバルとグロテスク・リアリズム——新しい書き手へ(目次が示す16章の構成全体が、創作論として一貫した論理的展開をなしていることを端的に示す)

編集メモ

Qiita 言及 0 件 / 外部シグナル refs=0 件 / topics=0 件。文学理論・創作論という専門領域であり、技術系プラットフォームにおける参照頻度は計測されていない

読む前に押さえておきたいこと

  • 近代日本文学(夏目漱石・芥川・太宰・安部公房など)を数冊以上読んだ経験
  • 文学テクストを「どう書かれているか」という視点で読む批評的読書の基本姿勢
  • ロシア・フォルマリズムやバフチン理論の概略(知らなくても読めるが、知っていると理解度が飛躍的に上がる)

学習のコツ

  • 3・4章の「異化」の定義を先に押さえてから読み進めると、後半の議論(カーニバル・神話的女性像)が格段に整理しやすくなる
  • 8章「文学は世界のモデルを作る」は本書の中心命題が凝縮されているので、全体を読んだ後に再読すると理解の精度が上がる
  • 大江健三郎の小説(『万延元年のフットボール』『同時代ゲーム』など)と並行して参照すると、理論と実作の対応が具体的にわかる
  • バフチン『ドストエフスキーの詩学』を手元に置いておくと、カーニバル・グロテスク・ポリフォニーといった概念の出所を随時確認できる
出版社による内容紹介

1 「小説の声」が聞きとられる 2 様ざまなレヴェルにおいて 3 基本的な手法としての「異化」(一) 4 基本的な手法としての「異化」(二) 5 「異化」から戦略化・文体化へ 6 想像力はどんな働きをするか(一) 7 想像力はどんな働きをするか(二) 8 文学は世界のモデルを作る 9 読むと書くとの転換装置(一) 10 読むと書くとの転換装置(二) 11 道化゠トリックスター 12 神話的な女性像(一) 13 神話的な女性像(二) 14 カーニバルとグロテスク・リアリズム 15 新しい書き手へ(一) 16 新しい書き手へ(二)

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