ISBN 9784005003235

進化とはなんだろうか

進化とはなんだろうか
出版社
岩波書店
刊行
1999-06

概要

自然淘汰・種分化・性淘汰を具体例で理解する進化生物学入門

想定読者

進化論の全体像を体系的に学びたい高校生・大学教養課程の学習者、および生物学を独学で学び直したい社会人

こんな人には向いていない

  • 大学院以上の研究者——岩波ジュニア新書シリーズとして中高生向けに設計された書であり、学術的な深度は研究水準に達しない
  • 分子生物学の実験手技や遺伝子工学の操作を学びたい読者——本書は原理の理解に特化しており、実験プロトコルは一切扱わない
  • 集団遺伝学の数理モデルを数式から理解したい読者——頻度依存淘汰やゲーム理論は概念として説明されるが、数式の導出は省略されている

読了後にできるようになること

  • 自然淘汰が「目的なきプロセス」であることを、フィンチの嘴やアノールトカゲの具体例から論理的に説明できる
  • 種分化の機構(異所的・同所的)と、種概念の定義の難しさを理解できる
  • 性淘汰理論(配偶者選好・同性間競争)と有性生殖の進化的コストを説明できる
  • 頻度依存淘汰とゲーム理論(タカ-ハト・進化的に安定な戦略)の基本的な枠組みを把握できる
  • 分子進化の中立説と自然淘汰の関係を区別して理解できる
  • ダーウィン以前の博物学から現代総合説に至る思想史の流れを概観できる

本書のキー概念(章解説)

  • 第 1 章 生物の多様性と適応 — 種の多様性と「うまくできたデザイン」という問いを立てる導入章。本書全体の問題意識を最初に提示する
  • 第 2 章 生命の長い鎖——つながっていく存在としての生物—— — DNA複製・タンパク質合成・ゲノムの基礎を扱う。進化論の議論に必要な遺伝の仕組みをここで把握する
  • 第 3 章 自然淘汰と適応 — 本書の核心章。「自然淘汰に目的はない」「進化は進歩ではない」という重要な概念上の訂正を丁寧に展開する
  • 第 4 章 変異の性質と淘汰の種類 — 突然変異の種類・中立説・分子進化を扱う。「変異はランダムだが淘汰は方向性を持つ」という非対称性が明確になる章
  • 第 5 章 新しい種の誕生 — 種概念の定義の困難さと種分化の機構を比較検討する。南極のコオリウオは実際の進化の速さを示す好例
  • 第 6 章 進化的軍拡競争と共進化 — 捕食者-被食者・花-動物・托卵の事例を通じて、種間の相互依存が進化をどう駆動するかを解説
  • 第 7 章 最適化の理論 — 最適採食戦略・最適一腹卵数など、生物の行動を「コストと利益」の枠組みで分析する手法を紹介
  • 第 8 章 頻度依存による自然淘汰 — ゲーム理論の進化生物学への応用。タカ-ハトゲームと進化的に安定な戦略(ESS)の概念は、行動科学・経済学との接点として読める
  • 第 9 章 雄と雌はなぜ違う? — 有性生殖の起源・赤の女王仮説・性淘汰を扱う。なぜ生物は二性に分かれたのかという根本問題に切り込む章
  • 第 10 章 進化の考えがたどった道 — 博物学・リンネ・ダーウィン・総合説・現代の発展という思想史。科学史に関心のある読者は最初にこの章から入ってもよい

編集メモ

Qiita 言及 0件 / 外部シグナル 0件。岩波ジュニア新書のロングセラー(1999年刊、2007年以降も重版)だが、現時点でオンライン技術コミュニティでの引用実績は確認できないため supplementary とする

読む前に押さえておきたいこと

  • 中学校理科レベルの細胞・DNA・タンパク質の基礎知識(2章で急に詳しくなるが基本概念は事前に持っていると読みやすい)
  • 確率の基本的な感覚(頻度依存淘汰やフィッシャーの性比理論で「割合」が頻出する)

学習のコツ

  • 1章から10章まで通読を前提とした設計だが、科学史に興味がある読者は10章「進化の考えがたどった道」を先に読むと、他の章で何が「革命的な発見」だったかの文脈がつかみやすい
  • 3章「自然淘汰に目的はない」「進化は進歩ではない」という節は、日常語との混同を解消する重要な概念整理なので精読を推奨する
  • 7〜8章は最適化理論・ゲーム理論を扱うため、行動経済学や社会科学を学んだ読者はここから先に読んでも理解しやすい
  • 巻末の「キーワード」セクションは用語整理に使えるため、通読後の復習や分からない語が出たときの参照用として活用できる
出版社による内容紹介

はじめに 第1章 生物の多様性と適応  種の多様性  生活史・サイズその他における多様性  うまくできたデザインや行動 第2章 生命の長い鎖──つながっていく存在としての生物──  進化ということ  生き物の定義  遺伝子のもと──DNA  DNAの複製  タンパク質の合成  親から子へ  ゲノムと遺伝子  個体変異と進化  化石が語るもの  地球上のすべての生命のもと 第3章 自然淘汰と適応  適応が生じる仕組み  個体変異  個体群の増加  資源をめぐる競争  適応度  自然淘汰の働き  フィンチの嘴  嘴の厚さの変異と遺伝  誰が生き残ったか?  アノールトカゲの足  自然淘汰に目的はない  進化は進歩ではない  適応は万能ではない 第4章 変異の性質と淘汰の種類  変異の源泉  点突然変異  大規模な突然変異  遺伝子の重複  突然変異率  有害か有利か  組み替え  淘汰の種類──安定化淘汰・方向性淘汰・分断淘汰  中立な変異  分子進化の中立説  中立な変化の速度  ヘモグロビンのβ鎖  形態の変化と適応 第5章 新しい種の誕生  種とは何か?  新しい種の出現  種内変異とクライン  輪状種  異所的種分化  同所的種分化  種分化の速度  南極海に住むコオリウオの仲間の進化  種の多様性 第6章 進化的軍拡競争と共進化  アリとチョウの幼虫  食う・食われる・食われないの軍拡競争  花と動物  果実と動物  カッコウの托卵 第7章 最適化の理論  最適採食戦略  餌場の防衛  最適一腹卵数 第8章 頻度依存による自然淘汰  闘争とゲーム理論  タカーハトゲーム  進化的に安定な戦略  タカーハトーブルジョワゲーム  タンガニーカ湖の魚の曲がった口  雄と雌の数──性比  フィッシャーの性比の理論  近親交配する昆虫の性比 第9章 雄と雌はなぜ違う?  有性生殖と無性生殖  雄と雌  性の起源の謎  有性生殖の二倍のコスト  赤の女王仮説  性淘汰の理論──性差はなぜあるのか?  ダーウィンの性淘汰の考え  繁殖の速度と性比  配偶者獲得をめぐる同性間の競争  配偶者の選り好み 第10章 進化の考えがたどった道  博物学の伝統と新世界の発見  リンネによる分類  ペイリーのデザイン論  進化の考え  ダーウィン登場  総合説の時代  現代の発展  おわりに  図版引用文献  キーワード

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