ISBN 9784272431076
生命の倫理学
概要
生と死・生殖をめぐる倫理問題を事例から自分事として考える
想定読者
生命倫理・医療倫理を体系的に学びたい大学生・大学院生、および医療従事者・社会福祉専門職で倫理的判断の基礎を整理したい人
こんな人には向いていない
- 医療技術の実務手順や診断知識を求める読者(本書は事例ベースの倫理考察が中心で医学的解説はない)
- 特定の倫理的立場の答えを求める読者(本書は問いを立てる構成であり、一義的な結論は提示しない)
- 哲学・倫理学の研究者を主な対象とした上級学術書を求める読者(大学テキスト向けの入門〜中級水準)
読了後にできるようになること
- 妊娠中絶・出生前診断・着床前診断をめぐる自己決定権と生命の尊厳の対立構造を整理できる
- 旧優生保護法・強制不妊手術の歴史的経緯と現在の障害者権利運動との接続を説明できる
- 脳死判定と臓器移植法をめぐる倫理的論点(日本固有の経緯を含む)を把握できる
- インフォームド・コンセントと終末期医療(安楽死・ACP)の概念と実践的課題を理解できる
- パーソン論・人間の尊厳という哲学概念を具体的な生命倫理問題に適用できる
- 優生思想の歴史的展開(相模原事件・優生政策各国比較)を死生学の視点と接続して論じられる
本書のキー概念(章解説)
- 第 1 章 妊娠中絶と出生前・着床前診断 — 米国の判例・障害者運動・日本の旧優生保護法まで射程が広く、自己決定権論の入口として機能する
- 第 2 章 生殖医療 — 不妊治療・卵子提供・代理出産・AIDを網羅し、生殖補助医療の倫理的論点を一通り把握できる
- 第 3 章 脳死と臓器移植 — 和田心臓移植事件など日本固有の経緯を踏まえた構成で、脳死判定の哲学的問題も押さえる
- 第 4 章 自己決定と終末期医療 — インフォームド・コンセント・安楽死・ボービア事件を連続して扱い、実務場面に近い思考訓練になる
- 第 5 章 人間の尊厳とパーソン論 — 第I部の事例考察を哲学的概念で再整理する章。先に第4章を読んでから戻ると理解が深まる
- 第 6 章 優生思想を超えて — 相模原事件・優生学の国際比較・日本の優生政策を連続して扱う。社会学・歴史学的読み方にも対応
- 第 7 章 死生学 — キューブラー=ロス・ターミナルケア・グリーフケアまで死の文化論として完結する終章
ハイライト
- 女性のlife(人生)と胎児life(生命)の狭間で葛藤や対立が生じる妊娠中絶、他者の命の救済が人の死の判定にかかわる臓器移植の現在……生と死、人の命と尊厳をめぐるさまざまな問題を具体的な事例から自分事として考える。(本書の問題意識と読者に求めるスタンス(自分事として考える)が端的に示されている箇所)
編集メモ
Qiita記事での言及は確認できず(isbn検索・タイトル検索ともにヒット0件)、楽天ランキング情報も入力なし。大学テキストとして安定した需要が想定されるが、外部シグナルの数値根拠なし
読む前に押さえておきたいこと
- 倫理学・哲学の事前知識は不要だが、高校公民(倫理)レベルの自己決定権・功利主義・義務論の概念を一度は聞いたことがある状態が望ましい
- 医学的前提知識は問わないが、妊娠・不妊治療・脳死の基本的な医学プロセスを事前に確認しておくと各章の論点を追いやすい
- 法律知識は不要。ただし旧優生保護法・母体保護法・臓器移植法の存在を知っているとスムーズに読み進められる
学習のコツ
- 第I部(第1〜4章)は各章が独立した事例で構成されているため、関心のある問題領域から読み始めてよい。ただし第I部を一通り読んでから第II部(第5〜7章)の哲学・歴史層に進むと、概念の定着が速い
- 各章末のコラム(『トリソミーとダウン症』『悪の凡庸さ』等)は本文の事例考察を補足する知識として機能する。初読時は本文を優先し、コラムは二読目に回す方が論旨を追いやすい
- 第6章の優生思想史は国際比較が多く単独では消化しにくい。障害学・社会学の入門書(障害の社会モデル等)を並行参照すると事実整理が楽になる
- 死生学(第7章)は他の章と独立度が高い。ターミナルケア・グリーフケア実務に関わる読者は第7章を先に読んでも差し支えない
出版社による内容紹介
女性のlife(人生)と胎児life(生命)の狭間で葛藤や対立が生じる妊娠中絶、他者の命の救済が人の死の判定にかかわる臓器移植の現在…。生と死、人の命と尊厳をめぐるさまざまな問題を具体的な事例から自分事として考える。 [目次] 第?部 知る・つかむ 第1章 妊娠中絶と出生前・着床前診断 1.妊娠中絶 コラム 米国における妊娠中絶問題 コラム 中絶における女性の自己決定権 コラム 「青い芝の会」と日本の障害者運動 2.旧優生保護法と強制不妊手術 コラム 障害とは何か 3.出生前診断 コラム 「トリソミー」とダウン症 4.着床前診断 コラム 「しょうがい」の表記について コラム 共生社会を理解するためのキーワード 第2章 生殖医療 1.不妊治療 2.卵子提供 3.代理出産 4.AIDで生まれるということ 第3章 脳死と臓器移植 1.救世主きょうだいと臓器移植 2.臓器移植の歴史 3.日本の「臓器移植法」と臓器移植の現状 コラム 和田心臓移植事件 4.脳死をめぐる問題 5.「脳死臓器移植」の問題点 第4章 自己決定と終末期医療 1.生を〈まっとう〉すること 2. 患者の〈自己決定〉をめぐる諸問題ーーインフォームド・コンセント 3.終末期医療 4.安楽死 5.自己決定と死ぬ権利ーーエリザベス・ボービアの事例 第?部 深める・広げる 第5章 「人間の尊厳」と「パーソン論」 1.人間の尊厳 2.パーソン論 第6章 優生思想を超えて 1.相模原事件から考える 2. 人類は生物学的に〈改良〉できるのかーー優生学の始まり 3.優生政策の各国での展開 コラム 人種は存在しない コラム 悪の凡庸さ コラム 人体実験を許すのは…… 4.日本の優生政策 5.これからの倫理のために 第7章 死生学 1.死生学とその背景 2.人間に固有の死とは 3. 死と向き合い,死を受けとめるーー代表的な死生学者による考察 コラム キューブラー=ロス 4. 死にゆくものへのケアーーターミナルケア,ホスピス 5. グリーフケアーー故人との絆(強い結びつき)とは 6.悲嘆の経験は共有可能か 7.歴史のなかにおける死の捉え方の変容 8.医療化社会における死 9.死の文化のために
この本がどの学習段階で役立つかは、 関連する ロードマップ から確認できます。