ISBN 9784492315071

医療現場の行動経済学 : すれ違う医者と患者

医療現場の行動経済学 : すれ違う医者と患者
刊行
2018-07

概要

医療の意思決定に潜む認知バイアスを行動経済学で解明する

想定読者

医師・看護師・医療従事者、および患者や家族として意思決定に関わる人。シェアード・ディシジョン・メーキング(SDM)を実践・研究する医療関係者に特に向いている

こんな人には向いていない

  • 行動経済学の理論的体系を学びたい読者には、医療事例に特化した本書より汎用入門書の方が適している
  • 診断・治療技術そのものを学びたい医療従事者には内容が合わない(意思決定プロセスの分析が主軸であり、臨床手技の解説はない)
  • がん検診や終末期医療といった具体的事例に関心がない読者には、各章の事例論考が冗長に感じられる場合がある

読了後にできるようになること

  • フレーミング効果(同じ情報でも伝え方で患者の判断が変わる仕組み)を医療コミュニケーションに応用できる
  • 現状維持バイアスや損失回避が、人工呼吸器の撤退やがん検診受診率にどう影響するかを説明できる
  • 高齢患者や終末期患者に対する意思決定支援の設計ポイントを把握できる
  • 医師自身の診療パターンに潜むバイアスを自覚し、より客観的な判断へ近づく視点を得られる
  • 臓器提供意思表示やがん予防行動における選択アーキテクチャの設計方針を理解できる
  • シェアード・ディシジョン・メーキングを行動経済学の枠組みで実装する際の論点を整理できる

本書のキー概念(章解説)

  • 第 1 章 診療現場での会話 — 具体的な会話例から読み始められるため、理論的背景が薄い読者にも入りやすい導入章
  • 第 2 章 行動経済学の枠組み — 損失回避・現状維持バイアス・フレーミング効果など本書全体の理論的基盤を整理する
  • 第 3 章 医療行動経済学の現状 — 国内外の研究動向を概観。後の各論章を読む前に読んでおくと理解が深まる
  • 第 4 章 どうすればがん治療で適切な意思決定支援ができるのか — SDM 実践者が最も直接的に活用できる章
  • 第 5 章 どうすればがん検診の受診率を上げられるのか — 損失フレームを活用した公衆衛生的介入の実証研究を紹介
  • 第 6 章 なぜ子宮頸がんの予防行動が進まないのか — 参照点と現状維持バイアスの具体的な絡み合いを事例で解説
  • 第 7 章 どうすれば遺族の後悔を減らせるのか — 意思決定の後悔と事前の関与の関係を考察する終末期医療論
  • 第 8 章 どうすれば高齢患者に適切な意思決定支援ができるのか — 認知機能の低下に伴う選択アーキテクチャ設計の論点を扱う
  • 第 9 章 臓器提供の意思をどう示すか — オプトイン vs オプトアウトの選択設計が行動経済学の教科書的事例として登場
  • 第 10 章 なぜ一度始めた人工呼吸管理はやめられないのか — 現状維持バイアスとサンクコスト効果が臨床倫理問題とどう交差するかを分析
  • 第 11 章 なぜ急性期の意思決定は難しいのか
  • 第 12 章 なぜ医師の診療パターンに違いがあるのか — 医師側のバイアスを正面から扱う章。自己診断ツールとして機能する
  • 第 13 章 他人を思いやる人ほど看護師に向いているのか — 職業適性と共感・意思決定の関係を扱う。医療職のキャリア論としても読める

ハイライト

  • 医療者がそうした患者の意思決定のバイアスを知っていたならば、患者により合理的な意思決定をうまくさせることができるようになる。また、医療者自身にも様々な意思決定におけるバイアスがある。(本書の問題意識を最も端的に示す一節。医師と患者の双方向バイアス論という独自視点が凝縮されている)

外部からの言及

  • note.com 上の複数の読者が、フレーミング効果・損失回避・現状維持バイアスといった行動経済学の概念が医療文脈で腑に落ちると評価している。『無意識に行動していたことが理論として言語化された』という感想が繰り返し見られる(other)
  • 医療従事者向けの紹介記事では、『ビジネス文脈で学ぶより医療事例で学ぶ方が行動経済学の理解が深まる』という観点から本書を推薦するものがある。一般向けの行動経済学入門書とは差別化された位置づけ(other)
  • 釧路中央メンタルクリニックのような医療機関が本書の内容を患者説明の参考資料として紹介しており、臨床現場での実用性が認められている(other)

編集メモ

Qiita での言及記事は確認できず(検索結果 0 件)。note.com 上に読書メモ・紹介記事が複数存在し、医療従事者・医療系学生から一定の参照がある。楽天ランキング情報なし。外部シグナルが限定的なため supplementary と判定

読む前に押さえておきたいこと

  • 行動経済学の基礎概念(損失回避・プロスペクト理論・ヒューリスティクス)の概略知識があると各章の議論の展開が速い
  • 医療従事者でない読者は、インフォームドコンセントやSDMの意味を事前に確認しておくとスムーズ

学習のコツ

  • 第1章の診療会話例を先に読み、自分が経験した医療場面と照らし合わせてから第2章の理論整理に進むと定着が早い
  • 第3部(第10〜13章)の医療者バイアス論は、医療従事者が自己チェックシートとして活用できる。自分の診療パターンと比較しながら読むと気づきが多い
  • 第9章の臓器提供設計と第5章のがん検診受診率の章は、選択アーキテクチャ設計の教科書的事例として、公衆衛生・政策立案に携わる読者にも単独で参照価値がある
  • 各章が独立した研究・事例を扱っているため、関心領域の章から先に読んでも理解できる構成になっている
出版社による内容紹介

医者「なぜ患者さんは治療方針を決められないのか」 患者「なぜお医者さんは不安な気持ちをわかってくれないのか」 人間心理のクセがわかれば、溝は埋められる! 「ここまでやって来たのだから続けたい」 「まだ大丈夫だからこのままでいい」 「『がんが消えた』という広告があった」 「本人は延命治療を拒否しているが、家族としては延命治療をしてほしい」 「一度始めた人工呼吸管理はやめられない」 といった診療現場での会話例から、行動経済学的に患者とその家族、医療者の意思決定を分析。 医者と患者双方がよりよい意思決定をするうえで役立つ一冊! シェアード・ディシジョン・メーキングに欠かせない必読の書。 「行動経済学では、人間の意思決定には、合理的な意思決定から系統的に逸脱する傾向、すなわちバイアスが存在すると想定している。そのため、同じ情報であっても、その表現の仕方次第で私たちの意思決定が違ってくることが知られている。医療者がそうした患者の意思決定のバイアスを知っていたならば、患者により合理的な意思決定をうまくさせることができるようになる。また、医療者自身にも様々な意思決定におけるバイアスがある。そうしたバイアスから逃れて、できるだけ合理的な意思決定ができるようにしたい。患者も行動経済学を知ることで、自分自身でよりよい意思決定ができるようになるだろう。」--「はじめに」より 【主要目次】 第1部 医療行動経済学とは  第1章 診療現場での会話  第2章 行動経済学の枠組み  第3章 医療行動経済学の現状 第2部 患者と家族の意思決定  第4章 どうすればがん治療で適切な意思決定支援ができるのか  第5章 どうすればがん検診の受診率を上げられるのか  第6章 なぜ子宮頸がんの予防行動が進まないのか  第7章 どうすれば遺族の後悔を減らせるのか  第8章 どうすれば高齢患者に適切な意思決定支援ができるのか  第9章 臓器提供の意思をどう示すか 第3部 医療者の意思決定  第10章 なぜ一度始めた人工呼吸管理はやめられないのか  第11章 なぜ急性期の意思決定は難しいのか  第12章 なぜ医師の診療パターンに違いがあるのか  第13章 他人を思いやる人ほど看護師に向いているのか

この本がどの学習段階で役立つかは、 関連する ロードマップ から確認できます。

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