ISBN 9784842918488
働く人のための人事労務管理
- 著者
- 永田 瞬/戸室 健作
- 出版社
- 八千代出版
- 刊行
- 2023-04
概要
労使関係の緊張を軸に日本の人事労務管理を批判的に読み解く
想定読者
人事・労務担当者、労働組合役員、経営学・労働経済学を学ぶ学生・研究者で、日本の雇用制度の構造的問題を体系的に把握したい人
こんな人には向いていない
- すぐに使える人事制度の設計テンプレートや法令チェックリストを求める実務者には、理論的比重が大きすぎる
- 経営効率・コスト削減の視点から人事施策を最適化したい読者には、本書の労働者保護を重視する立場が合わない
- 非正規・外国人雇用の実態をすでに研究・政策立案レベルで把握している専門家には、各章の導入部が冗長に感じられる可能性がある
読了後にできるようになること
- 終身雇用・職能資格制度・年功賃金という日本型雇用モデルの法制度的根拠と実態のギャップを説明できる
- 正規・非正規・外国人労働者間の賃金・処遇格差がどのような制度的要因によって生じているかを分析できる
- 労働時間管理と法制度の規制緩和の関係を、長時間労働問題の文脈で整理できる
- ジェンダー不平等が企業側要因と労働者側要因の双方から生まれる構造を把握できる
- 派遣労働・外国人技能実習制度の法的位置づけと政策的経緯を説明できる
- 労働組合の機能と日本の企業別組合の特徴を、欧米との比較視点で論じられる
本書のキー概念(章解説)
- 企業経営と人事労務管理 — labor process theory(労働過程論)の紹介を含む理論的基盤の章。第1章以降の分析視角を整えるため、理論に慣れていない読者は本章を先に通読しておくと理解が深まる
- 第 1 章 採用と退職 — 「終身雇用」を成立させる法制度とその実態の乖離を扱う。日本の雇用慣行を批判的に捉え直す入り口となる章
- 第 2 章 職能資格制度と人事査定 — 役割等級制度・コンピテンシーなど近年の制度変化も取り上げており、人事実務担当者が制度の変遷を整理するのに有用
- 第 3 章 賃金 — 「世界標準ではない日本の賃金制度」の節を含む。国際比較の視点から日本の賃金体系の特異性を俯瞰できる
- 第 4 章 能力開発・人材育成 — タレントマネジメントとエンプロイヤビリティの節が、企業側の人材戦略と労働者側のキャリア自律との緊張関係を論じる
- 第 5 章 労働時間管理 — 法制度の規制緩和と長時間労働の実態を対比する章。働き方改革関連法の理解とあわせて読むと有効
- 第 6 章 ジェンダーと女性労働 — 企業側・労働者側の双方の要因分析を含む構成。DEI推進担当者が課題の構造を把握するための参照章として活用できる
- 第 7 章 非正社員 — 派遣労働の法的定義と正社員減少の要因を扱う。同一労働同一賃金の文脈で読むと問題の根拠整理に役立つ
- 第 8 章 外国人労働者 — 技能実習生・留学生・日系人と政策類型ごとに整理されており、外国人材活用を検討する担当者の制度把握に適している
- 第 9 章 労働組合 — 日本の企業別組合の特徴を産業別・職種別組合と対比する。組合役員・労務担当者が対話の前提知識を整理するのに有用
ハイライト
- 人事労務管理を労働力の効率的利用として位置づけることはせず、労使関係や労働組合の対抗・緊張関係の中で発展するものと捉える。日本の労働者が置かれている状況、雇用制度・政策、問題の根源、解決策などを把握し、人事労務管理の基本的知識を得られるよう配慮(本書の分析視角を最も端的に示す箇所。管理側ではなく労働者側に立った叙述姿勢が明示されている)
- 伝統的な男性中心の正規雇用の働き方に対して、非正規、女性、外国人雇用などの働き方が広がっている。これらは既存の働き方の見直しを促すと同時に、労働条件格差などの問題を浮き彫りにする(序章冒頭の問題設定。本書全体が扱う論点が凝縮されており、読者が自分の課題と照合しやすい)
編集メモ
Qiita 言及 0件 / rakuten ranking シグナルなし。hr-recruitment トピックの学術的テキストとして参照価値はあるが、外部言及シグナルが確認できない段階では補完的な位置づけ
読む前に押さえておきたいこと
- 日本の労働関係法の基礎概念(労働基準法・労働契約法・労働組合法の位置づけ程度)
- 日本企業における正規・非正規雇用の区別と社会保険適用の大枠
学習のコツ
- 理論色の強い序章は読了後に振り返る使い方も有効。まず第1章から日本型雇用の具体像に入り、序章の labor process theory に戻ると定着しやすい
- 第3章(賃金)と第7章(非正社員)は格差問題の核心を扱うため、同一労働同一賃金・最低賃金改定などの時事を並走させて読むと論点が鮮明になる
- 各章は独立性が高いため、外国人雇用・ジェンダー・労働組合など自分の業務課題に近い章から先に読む選択が可能
出版社による内容紹介
伝統的な男性中心の正規雇用の働き方に対して、非正規、女性、外国人雇用などの働き方が広がっている。これらは既存の働き方の見直しを促すと同時に、労働条件格差などの問題を浮き彫りにする。他にも長時間労働、パワハラなど日本の労働環境が抱える問題は多い。本書は、人事労務管理を労働力の効率的利用として位置づけることはせず、労使関係や労働組合の対抗・緊張関係の中で発展するものと捉える。日本の労働者が置かれている状況、雇用制度・政策、問題の根源、解決策などを把握し、人事労務管理の基本的知識を得られるよう配慮 序章 企業経営と人事労務管理 1企業経営と人事労務管理 2人事労務管理の機能と体系 3労働過程論(labor process theory)と人事労務管理 4人事労務管理の概念と外的環境 第1章 採用と退職 19 1日本企業による採用方法 2「終身雇用」を成り立たせる法制度 3「終身雇用」の実態 第2章 職能資格制度と人事査定 1配置、異動と遠隔地転勤 2職能資格制度 3人事査定 4役割等級制度(mission grade system) 5コンピテンシー(competency) 第3章 賃金 1賃金とは 2賃金制度 3世界標準ではない日本の賃金制度 4非正規労働者の賃金 第4章 能力開発・人材育成 1能力開発と人材育成 2日本企業の人材育成 3エンプロイヤビリティと労働者の能力開発 4タレントマネジメント(Talent Management)と人材育成 第5章 労働時間管理 1日本の労働時間の実態 2労働時間管理と労働時間法制の規制緩和 3人事労務管理の柔軟化と労働時間管理 第6章 ジェンダーと女性労働 1労働における男女不平等の現実 2労働における男女不平等をもたらす企業側の要因 3労働における男女不平等をもたらす労働者側の要因 4男女平等と人事労務の課題 第7章 非正社員 1正社員減少と非正社員増大の要因 2非正社員についての法制度 3派遣労働とは何か 第8章 外国人労働者 1外国人労働者の推移 2日本の外国人労働者政策 3日系人 4留学生 5外国人技能実習生 第9章 労働組合 1労働組合とは 2日本の労働組合の特徴
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